伊豆・稲取温泉の「食べるお宿 浜の湯」は、金目鯛の姿煮や舟盛りに象徴される料理へのこだわりと、完全担当制・部屋食という旅館文化を守り続ける老舗旅館です。リピート率は約60%。館内のおよそ3分の1を、リピーターのお客様が占めます。
その一方で、予約課には月約2,000件の電話が集中していました。「来館前の電話は、お客様との大切な接点」——そう考えて手放さずにきた電話が、そのまま4名(常時3名体制)のスタッフの負担として積み上がっていました。
NEWT Chatを最初期に導入いただいた結果、電話は月約400件・対応時間にして約17時間削減されました。空いた時間は、記念日のサプライズやアレルギーの相談といった「人にしかできないおもてなし」へと振り向けられています。
専務の鈴木達也様に、導入の背景から現場の変化までじっくり伺いました。(聞き手:令和トラベル 受田)

「浜の湯に来たら、刺身は当分いらない」。料理と、人のおもてなしで選ばれ続けてきた宿
──今回、NEWT Chatの導入事例紹介の第1弾として、ぜひ浜の湯さんのお話を伺いたくて。まずは「食べるお宿」を掲げていらっしゃる背景と大切にされていること、施設の規模感や客層まで、まとめて教えていただけますか。
鈴木さん:昔は今みたいな綺麗な部屋もなくて、客室20室ほどの本当に小さな宿でした。でもその頃から、ありがたいことにリピーター様が多かったんです。その方々がいつも何とおっしゃってくれたかというと、「浜の湯に来たら、もう刺身は当分いらないよ」と。それくらい地の魚をふんだんに使った料理をお出ししてきました。「料理だけは絶対に満足して帰ってほしい」——その思いでずっと経営してきたことが、「食べるお宿」という名前の背景になっています。
今も一番大事にしているのは、本物の旅館文化を感じて、楽しんでいただける宿にしていくことです。代表的なのが、この時代においても続けている完全担当制と部屋食です。これこそが日本にしかない旅館文化の仕組みだと思っていて、その仕組みの上で人が出せる温かみ、そういうおもてなしを大切にしています。
従業員規模は90名から100名程度です。客層は本当にありがたいことに満遍なくて、20代から50代以上の方々まで幅広くお越しいただいています。インバウンドのお客様は10%未満で、日本人のリピーター様が予約を取りやすい売り方をしているので、日本人のお客様が大半ですね。1回目に来て、2回目もまた来てくださる方が約60%です。毎日、少ないときでも館内の3分の1以上はリピーターのお客様なんです。

月約2,000件の電話。「大切な接点」が、そのまま現場の負担になっていた
──NEWT Chatをかなり初期から導入いただきましたが、そもそもお問い合わせ対応のどこに負担や困りごとを感じていらっしゃったんですか。受ける体制も含めて伺えると嬉しいです。
鈴木さん:本当にシンプルで、予約課の電話件数です。ここに絶対的な課題感がありました。ただ、うちの予約課の方針として、来館前に電話でお話しすること自体がお客様との1つの接点なんです。そこで旅の目的やご要望を事前に伺っていれば、来館時にそれを活かしてさらに素晴らしいおもてなしができる。だからこそ電話を重視しています。
今はもうオンラインでしか予約できない施設もある中で、うちは「電話予約もどしどしください」というスタイルですし、すべてのお客様に宿泊1週間前の事前確認のお電話もしています。受ける側は予約スタッフが4名で、常時3名が出勤している状況です。フロントが出るのは館内にいらっしゃるお客様からの内線だけなので、外線は基本的に予約課が全部受けています。
その中に、ホームページに載っている情報であればすぐ回答できたな、という内容のご質問も実際にあるんですよね。それでも定型のご挨拶をして、お問い合わせ内容を伺って、回答して……となると、短い時間でも1件は1件で、そのぶんのお時間はかかってしまいます。ここは解消できそうだと思いつつ、どうやったらいいかを考えている最中でした。

「本当にちゃんと回答できるのか」。それでも導入を決めた、たった1つの判断軸
──昨今いろんなAIチャットやチャットボットがある中で、当時はどんなイメージを持たれていましたか。導入を決めた理由と、現場の反応も合わせて伺いたいです。
鈴木さん:本当にシンプルに「ちゃんと回答できるのかな」というところと、あとはやっぱり、人が絡む接点をある種、機会損失してしまって大丈夫なのかという不安はありましたね。そこが大きかったです。
それでも導入を決めたのは、ホームページでご確認いただけるような内容のお電話だと、お客様とお話しできる時間もどうしても限られてしまうからです。そこをチャットに任せて、逆に事前確認では「こういうサプライズをしたい」「アレルギーについて詳しく話したい」といったご要望を、じっくり漏れなく確認する。そういう大事な部分に時間を割けるようになると考えました。予約課のパワーを、人が介在すべき場所に集中させたい、というのが一番の判断軸でした。
現場は正直、けっこう歓迎でしたね。むしろ「こういうのがあるのに、うちは入れないんですね」みたいな声すらあったくらいでした。そのため、実際にやるよという話になったときも、反発は全くなかったです。

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「こんな情報があったらいいな」が揃っていた。管理画面の使いやすさと回答精度
──実際に管理画面を触られて、機能面や回答の精度はどう感じられましたか。
鈴木さん:いや、これはインタビューだからじゃなくて、本当に正直に言うんですけど、とても使いやすいなと思いました。画面に出てくるものがシンプルだし、データを見るときに「こんな情報があったらいいな」と思うものが本当に揃っていました。システムって大体、「こういう風にできないの?」「この状況は見れないな」というのが出てくるじゃないですか。それが本当になかったですね。
回答の精度も高いなと思いました。最初に情報を入れるところはもちろん苦労しましたけど、そこさえやってしまえば非常に高いです。ゼロから始めてくださいじゃなくて、ホームページに書いてある情報はすべて読み取ってもらった状態からだったので、導入はスムーズでした。回答できなかった質問が管理画面で抽出されて、すぐ追加できる機能も分かりやすくて、とても使いやすいです。

電話は月約400件減、約17時間の削減。内容は「人にしか答えられない相談」へ
──導入後、日々の業務はどう変わりましたか。いまチャットは月間約3,000件ご利用いただいていますが、数字での変化やお客様の反応も含めて伺えると嬉しいです。
鈴木さん:電話件数が本当に減っています。具体的に言うと、月2,000件程度あった電話の受信が、導入後は約1,600件まで減りました。対応時間にすると、1ヶ月で約17時間の削減になっています。
お問い合わせの内容も、汎用的なFAQで答えられるようなものは減って、もっと踏み込んだ、スタッフだからこそ答えられる詳しい内容にどんどん変わっていますね。チャットである程度ご確認いただいた上で、より深い質問をお電話でいただく流れになってきています。
お客様からの反応も、悪い意見は一切ないですね。多少はあるかなと思っていたんですが、1件もありません。あと驚いたのが、ホームページにチャットを掲載して、すぐに数百件ものご利用があったこと。正直そんなにいかないだろうと勝手に思っていたので、お客様って、ああいう手軽に質問できるものを求めていたんだなという証拠だと思いました。
問い合わせデータで見えた「記念日の宿」という一面。パティシエ採用にもつながった
──問い合わせのデータから見えてきたことや、そこから新しく始められたことはありますか。
鈴木さん:なんとなく分かっていたことでもあるんですが、こうやって質問の内容や履歴を見ると、記念日やプロポーズなど、特別な日に大切な方をお祝いしたいという思いで来てくださる方が本当に多いなと改めて実感しました。ここに対して我々ができることを、もっと考えていかなければと思いました。
それで実は最近、うちでパティシエを雇ったんですよ。記念日にパティシエが作ったケーキをお出しできるのはもちろん、メッセージプレートなんかも簡単にできるようになります。今までになかった方法でお客様を喜ばせる、新しい作戦を考えるきっかけにもなりました。ここはもっと幅を広げていきたいですね。

次はAI電話へ。「絶対に使った方がいい」と薦める理由
──最後に、今後の活用方針と、同業の方に薦めるとしたらどんな言葉で薦めるかを伺えますか。
鈴木さん:今まさに検討中なのが、7月にリリースされた「NEWT Voice」です。うちはお電話でのやりとりを大事にしてきた宿なので、いまの応対品質はそのまま担保したうえで、スタッフがお客様の本当の困りごとや満足度にどれだけ時間を使えるようにするか、というのは社長ともよく話しています。電話に限らず、あらゆる場面で同じ考え方で進めていきたいですね。
同業の方に薦めるとしたら、「絶対に使った方がいい」と。これだけシンプルに分かりやすく操作ができて、お客様も手軽に質問しやすいツールだからこそ、時代的にも非常にマッチしています。生産性が上がって、お客様の利便性も高まりますからね。それに、いただいたご質問からお客様の潜在的なニーズが見えてくるので、それを次のサービスづくりに活かせます。そこが一番大きいかもしれません。
──生産性が上がって、お客様の満足度も上がって、それがおもてなしにもつながる。私たちとしても本当に嬉しいお話でした。本日はありがとうございました!
※記事内のサービスおよび施設に関する情報はインタビュー時点のものです。現在は異なる場合がありますので、予めご了承ください。
